雪降る夜に教えてよ。
そこにあった小さな箱に目を移す。
手の平サイズの宝石箱。それを開けてから微笑んだ。

銀鎖に並んだ透明な石の羅列。会社のクリスマスパーティーの夜に、桐生さんからプレゼントしてもらったブレスレット。

これを着けて行こう。

それから、礼装用の黒い小さなバックを手に取って、スマホやお財布、ハンカチにティッシュと小さな箱を忍ばせる。

中身は銀のライター。

私はもらうばかりで何もお返しをしてないし、今回は誕生日ってことだし、プレゼントもおかしくないよね?

スリムで、ちょっとシンプルすぎるかな? と思ったライターだけど、私が一人で選んでみた。

だって“恋人”のプレゼントだもの、自分で選ばなくちゃね。

サンダルを手に取ってから、寝室のドアを開ける。

待っていてくれた桐生さんと目が合ってはにかむと、ちょっと満足そうな笑顔が見えた。

「うん。よく似合う」

そうですか、って言うのも変だし、そんなことないです、って言うのも妙なので、小首を傾げて呟く。

「ありがとうございます」

ふわっと笑う桐生さんは、カップを出してコーヒーを注いでくれた。

「勝手に淹れたよ。まだ目が覚めてないみたいだし」

「朝が弱いんですよね」

「じゃ、それ飲み終わったら、出かけるよ?」

受け取ったカップから、視線だけ上げて彼を見る。

「どこに行くんですか?」

「ん? 髪のセット。お前に任せてたら、またキチキチにまとめちゃうでしょ」

それは間違いなく。きっちりまとめるのだけなら得意だしねぇ。
逆にアレンジヘアをしろと言われても、自分の髪でやったことがないから困るんだけどね。

「や。でも、そんなこと言われても、美容院とか予約なんてしてないし」

慌てて手を振ると、桐生さんは、その腕にはめられたブレスレットに気がついた。

「ああ。つけてくれたんだ?」

「あ……はい。つけました」

我ながら、訳わかんない返答してる。
だって、なんだかとっても恥ずかしい。

桐生さんはゆっくりとブレスレットをした方の腕を手に取り、手首の内側にキスをした。

「……っ!?」

激しく瞬きを繰り返す私を見て、桐生さんはちょっと笑う。

「脈が早いよ?」

「そ、そんな事ないです」

「慌ててるよ?」

そりゃそうでしょうよ! これでドキドキもしない女子はあまりいないんじゃないかと思うよ!
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