雪降る夜に教えてよ。
「や。OKっていうなら別だけど、今からだとさすがに遅れるしね?」

「せっかくのお誘いですし、パーティーには行かないと」

「うん。もっと抵抗するかと思ったんだけどね」

抵抗って……ここまでしてくれた桐生さんに『行ってらっしゃい』と手を振って、近所のカフェで待ってますとか、そういう事をしそうに見えたと……?

いや。確かに私ならそうしそうだけれど。

「それじゃ大人気ないですし」

「そもそも、さなは大人気ないじゃん?」

くそぅ。言い返せない……。

こういう時には、やっぱり話題をそらすことにしよう。

「どんな感じのパーティーなんですか?」

「んー……。そうだなぁ。この間の親睦会を、ちょっとこじんまりさせた感じじゃないか?」

この間の親睦会も、かなりの規模だったような気がするんですが。

「そうなんですか?」

「向こうの人はホームパーティー好きだからね。やるのはルイのセカンドハウスだって事だから、百人集まることもないよ」

日本人のホームパーティーって、お茶会とかならイメージ着くんだけれど……。

でも、百人以下だったとしても、四・五人って訳でもなさそうなので、それはそれで凄いんですけど。

「大丈夫。今日は場違いな格好でもないし。いつもどおりで居れば問題ないよ」

コノ格好で場違いじゃないって……。

頭はアップにしてクルクル巻き髪だし、化粧もいつもより濃いし、こんな格好は結婚式でもしたことが無いんですけど!

「大丈夫。何かあっても俺が居るから」

桐生さんは前方を向いたままで微笑む。

その横顔を見ながら肩から力を抜いた。

本当に、この人は優しいよね。

「すみません」

「謝ることじゃないでしょ」

車が一度停止して、おしゃれな感じのマンションの地下駐車場に降りていく。

桐生さん、マンションなんだぁ。って、考えてみればそうだよね。

一人暮らしだって言っていたし、自炊してるとかも聞いていたし。

「管理費高そう」

「ぶっ」

思わず呟いたら、桐生さんは吹き出した。

「や。その前に素敵なマンションですね、とか、何か無いわけ?」

「そんなこと言って欲しいんですか?」

「全然?」

「ならいいじゃないですか」

「まぁ、そうなんだけどね」
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