雪降る夜に教えてよ。
そう言って、大きな車の隣に車を寄せた。

それからエンジンを切って、運転席を出ると、普通に助手席を開けてくれる。

「こっち」

そのまま私の手を引いて、少し薄暗い地下駐車場を歩く。

周りを見ると、車種は良くわかんないけどピカピカした高級そうな車ばかり。

もしかして、かなりいいマンションなんだろうか?

ちょっと気後れしている私に、桐生さんは微笑んだ。

「落ち着いてくつろいでいて」

『落ち着いて』の言葉に無言で瞬きする。

やっぱり落ち着いて見えなかったらしいね。

「この間、発見したことなんだけど。お前、英語だとよく話すんだな?」

「……ばれましたか?」

「まぁね。あれだけズケズケ言ってたら普通バレるでしょ」

まぁ、そうなんだけど……。

「それってなんで?」

「英語を習ってる途中、日本語より直接的だなって思って」

「んー……。まぁ、文法なら主語がないと成り立たないよね」

「日本語って結構あいまいだから。誤解も多いじゃないですか」

「だから、あまり話さない?」

その通りなんですけれどね。

地下から直接エレベーターに乗ると、八階のボタンを押した。

それから目的の階に着くと、私たちは無言でエレベーターを降りる。

てか、廊下が大理石っぽく見えるけれど……どれだけ高級なマンションなんですか!

「何か気にくわないことあった?」

キョトンと桐生さんを見上げると、ちょっと苦笑している。

気にくわないとか言われても。どうしてそんなことを?

「顔、しかめてるよ?」

「や。ちょっと文化的衝撃を……」

「……一応俺も国籍は日本人だけど。しかもどうして普通にカルチャーショックとか言えないわけ?」

そう言って、黒光りするドアの鍵を開けた。

部屋に入ると結構広さ半端ない。

玄関をあがると右手が靴箱。
廊下をちょっと進むと左手に開けっ放しのドアから洗面所とバスルームが見えた。

「こっち」

促されて、リビングに足を踏み入れる。

カウンターキッチンなのはうちと一緒だけど、広さが全然比べ物にならないくらいに広い。

「ま、そこに座って待っていて」

桐生さんは冷蔵庫から出したお茶をグラスに注ぎながらソファを示す。

色自体は黒を貴重としていて落ち着けるものなんだけど、まったく落ち着けない。

所在なさげに立っていたら座らされた。
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