雪降る夜に教えてよ。

氷解

*****



『愛し方なんて人それぞれだし、覚えていけばいいんだと思う』

声もなく、口を押さえる。

構わずに桐生さんは言葉を繋げていく。

『言わなきゃわからない人の方が多いんだよ。俺達は決定的に言葉が足りない。俺は一度、君の手を放したから……だったら、つなぎ直せばいいんだと……出来れば、と思う』

優しくて、ちょっと自分勝手で、でもどこか情けない言葉に眼を閉じる。

『君が俺を必要としてくれるなら。つなぎ直したい。どんなことがあったとしても、俺が好きなのは君だから』

まだ……あなたは“好きだ”と言ってくれるの?

私は必要としてもいいの?

どうして、貴方はそうなんだろう。
あの状態から、普通は諦めるものでしょう?

『……とりあえず、今から行くから』

「え!?」

今から……? 行くから?

急に現実味が押し寄せてきて、我に返った。

「駄目です!」

叫ぶように言うと、しばらくの沈黙。

『なんで?』

何となく“いつもの”調子で言われて気が抜けた。

ソファに座りながら、意味もなくまわりをきょろきょろと見回す。

「散らかっているし」

散らかるどころか、最近は習い事だらけで寝に帰ってきているだけの生活感のなさだけど。

『気にしないし』

……って言いますよね。うん。なんとなくそんな気がしていました。

「や。あの……」

『他に何か反論が?』

「風邪ひいてしまって……うつると申し訳ない……」

そしてまた沈黙が落ちる。

「あ、あの……」

『もっしも~し、さなちゃん?』

いきなり脳天気な佳奈の言葉が聞こえて、キョトンとした。

『今、物凄い形相の桐生さんが上がって行くからぁ。心の準備ヨロシクネ』

え?

「上がって行くって、あんた、今どこなの?」

『え~。さなちゃんのマンションの下ぁ』

マンションの下?

嘘。待って待って、ちょっと冗談じゃない!
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