雪降る夜に教えてよ。
「……ところで。質問なんですけど」

「ん?」

「そうして恭平さんを締め上げようと思ったんですか?」

桐生さんは少し考え、ちょっと困った顔をした。

「その話は、熱下げてからな?」

そういえば……と、思い出して急にだるくなる。病は気からって言葉がよくわかるかもしれない。

「さて、どうするかな」

そう言った桐生さんは、ちらっと私を見た。

「何をですか?」

「お前、一人で立ち上がれる?」

「もうちょっとしたら、鎮痛剤効いてくると思いますから。たぶん解熱作用も出てくるはずです」

「良かった。俺が着替えさせてもいいけど。ちょっと今はまだ遠慮したいかなー」

「はい?」

「その格好で寝る訳にいかないでしょ。俺はソファ借りるから」

えーと……それってもしかして?

「泊まる気ですか?」

「駄目?」

「や。あの!」

駄目? とか、なんで、そうしれっとした顔で言えるんですか!

たぶん、真っ赤になったり青くなったり忙しい私を見て、桐生さんは苦笑した。

「あのさ。いくらなんでも、具合悪い人をどうにかしようなんて思わないから」

「……紳士ですね」

「や。食べ頃になったら頂いちゃうけど、きっとまだだろうね?」

満足げな笑みを浮かべる桐生さんを見て、瞬きを繰り返す。

食べ……食べ頃にって。

「ま、先は長いことですし。気長にいこうか?」

彼は片眉を上げて立ち上がった。

「お泊りの了承も得たことだし、お粥でも作るな?」

ちょっと待って。
私がいつ了承したって言う!?

慌てて桐生さんのコートを掴んだ私を彼は静かに見下ろす。

「あのさ? 普通、彼女が寝付いてたら、彼氏が面倒みるもんでしょ?」

「確かにそうだけど……」

「じゃ、つべこべ言わない」

や。つべこべは言いたくなるでしょう?

言わせてくれるものならば。
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