雪降る夜に教えてよ。
唐突な言葉に、質問の意味が解らない。

普通、そんな事を面と向かって聞いてくる人もいないと思うのですが、どうなんでしょうか?

「……マネージャーは、なんでそんなにお喋りなんですか」

マネージャーだって、普段はそんなに話をしているような人じゃないでしょう?

まぁ、けたたましいお局様連中が周りにいれば、あまり口をはさめないだけかもしれないけれど、いつもはニッコリ微笑んで、ただ頷いているような印象だ。

「秋元さんが話やすいからじゃない? 余計なこともあまり言わないでしょ」

「言ってもわからない人の方が多いですから」

「言わなきゃわからない人の方が多いさ」

それはそうだろうけれど。

「私、口下手ですし」

「そんなことはないと思うよ。君が真剣に話しているって事は、会って間もない夏樹ですら判ったんだから」

その軽い口調に、桐生さんを見る。

「夏樹さんと仲がいいんですね?」

「社内のシス管なんてやっていたら、エンジニアと話す機会も多いし」

「そういう桐生さんも、システムエンジニアなんですよね?」

「当たり前でしょう。解らないものは管理できない」

まぁ、普通はそうですね。

「あれですよ。私は口下手と言うよりも付き合い下手なんです」

「なんで?」

なんでって……そこは聞く事でしょうか?

「桐生さんはストレートに質問してくるんですね」

「うーん。結構ひねくれているよ?」

そうこう言っているうちに会社に着いて、私は社員入口で降ろしてもらう。

「有り難うございました」

「いえいえ。雪だるまを見るよりはいいから」

ゆ、雪だるまって……一言多い。

ムッとしてドアを乱暴に閉めると社員入口に向かった。

いつも通り警備員さんにご挨拶をして、いつも通りの道順を急いでブースに入ると、システムヘルプの早良さんが席に着いていた。

「早良さん」

「あ。グッモーニン秋元ちゃん」

グーとパーで手を振る早良さんに、ロッカーにバックをしまうと、私はコートを脱いで近づく。

早良さんは、こういう私にも好意的にしてくれる、ショートカットのよく似合うサバサバした性格のミセスだ。

「昨日はごめんね~。会社に行こうにも足がなくってさ~」
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