雪降る夜に教えてよ。
「棚橋ちゃんは来られないと思います。あの娘のうちはウチより遠方だから。来られたとしても午前中って事はないでしょう」

「じゃ、また今日も僕が参戦しますね」

え。それまた面倒なことになりそうなので困ります。

「いいですよ。桐生さんはご自分のお仕事なさって下さい」

言った私に、桐生さんは片眉を上げて、胸の前で腕を組んだ。

「これでも一応、浅井さんに頼まれているし。俺の仕事自体は昨日の夜に終わらせてあるし。そもそも、今日の件数も三百件越えだけれど、それを二人でやる訳?」

あまりやりたくない……といいますか、聞きたくない数字ですね。

「さて、反論を聞こう」

そんな偉そうに言われましても困ります。これで意固地になっても早良さんに恨まれそうな気もするし。

「いいえ。今日もよろしくお願いします」

早良さんがケタケタと笑い、桐生さんを見た。

「また、仲良くなったものですね~」

「は?」

と、桐生さん。

「仲良く……見えますか?」

とても懐疑的な表情をみせた。

「十分に。だって今、この子が桐生さんに気を使いましたもん。忙しかったら、主任までこき使う秋元ちゃんが」

早良さん、こき使う。て酷くない?

「僕はまた、邪険にされているのかと思ったよ」

それは間違いなくしていますとも。

まぁいいか。構っていられないので、無視をしよう。

席に着いてパソコンを立ち上げ、桐生さんが振り分けてくれたらしいメールにさっと目を通す。

それからタイムカードを押すついでに、給湯室で紅茶を淹れて来てから席に戻った。

戻るとオフィス内に昨日より人も増えていて、私は画面に集中することに成功する。






***



佳奈からのメールに気がついたのは、どうにか定時に全部終わらせて帰り支度をしている時だった。

「秋元ちゃん。うちの旦那が来てるから、車で送ってあげるよ~」

早良さんはそう言ってくれたけど。

「すみません、用事が出来たみたいです」

「何、その他人事な答え」

不思議そうな早良さんに向かって、スマホを振る。
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