雪降る夜に教えてよ。
「なら、いいじゃないですか、それで」

「不思議なもので」

この人は一体何なんだ。質問したいお年頃なの?
それって小さな子供のすることじゃないの?

「あのですね! 本当に人の好みなんて色々なんです。たまたま貴方に惹かれない女が居たからって放ってけばいいでしょ!」

「俺としては燃えるけど」

「勝手に燃えててください!」

桐生さんは人の良さそうな笑みを浮かべて、どこか可愛らしく首を傾げる。

「それはOKってこと?」

「NOってことです!」

それから軽く口笛を吹いた。

「それは俺に襲えっていうこと?」

「殴られたいってことですか?」

「いいや? でもキスして欲しいってことかな?」

はぁ?

あまりにも突飛なコメントにぽかんとした。

「理性的じゃない女性を大人しくさせるには、一番効果的なんだよ? 試してみる?」

トントンと自分の唇を指先で叩きながら、桐生さんは微笑んだ。

なんだろうこの人、からかうにも程があると思うんだけれど!

「試さない‼」

「じゃ、この次の楽しみにしておく」

にっこりとした笑顔に、呆気にとられる。

この人はもう、強引で自分勝手で訳わかんない人だと認識しよう!

「遊びなら、こんな意味不明な女より、もっとわかりやすい人を選べばいいじゃないですか」

「遊びならね」

あっさりと返された言葉に、頭が混乱しそうになった。

それはつまり……ええと……。

「……あの」

「君は察しの悪い人じゃない。意味を解っていて問うつもりなら、行動で示すけど?」

行動でって……。

狭い車内で精一杯離れた私に、桐生さんは自嘲気味に苦笑した。

「ま、男として意識してもらっただけでも、良しとしておこうかな」

「……っ!」

「何か反論がある?」

あるっ! ありすぎてよく解んないけどっ!

「わ、私、そういった事はしない主義ですから!」

「なんで?」

だから、普通そこは聞くとこじゃないっての!!

「誰かとどうこうとか、その……お付き合いとか、まったく考えた事ないですし。遠ざけてるって気付きませんか! 普通!」

「だからなんで?」
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