雪降る夜に教えてよ。
「それは前に申し上げた通りです」

まるでケンカみたいだけれど、でも、ケンカになりはしないケンカ。

「あの……」

思わず言葉が出て来て、言葉にならなくなった。

何を言いたいのか、一瞬にして判らなくなる。

こんなことは初めてで、少し戸惑った。

「なに?」

困ったような笑顔に首を振ってみせる。

「なんでもないです」

小さく呟くと、桐生さんは本当に困ったように笑って、私の頭に手を置いた。

「いつかね」

いつか……また“いつか”は、私にあるのだろうか?




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