雪降る夜に教えてよ。
***



ヘルプデスクの仕事が一段落すると、システム管理の席に座る。

すると、オフィス内が途端に静まり返る。最近、早良さんにも雰囲気が怖いと言われていた。

ちょっと無理もない。自分でもイライラしていると思う。

思うけれど、どうしようもないことで。

桐生さんとは先日のようなやり取りを繰り返し、今は何故か見守る態勢になっている感じ。

なんにせよ粘り強い。

何にそんなに固執することがあるのかが判らないけど。

とにかく週末の夜、佳奈に誘われて飲みに出た。

「さなちゃん。最近疲れてなーい?」

ちょっと心配そうな佳奈に首を傾げる。

「ん~……そうだなぁ。残業多いし疲れてるのかな?」

「ううん。そうじゃない感じだよ? 夏樹くんも、なんか変だって言ってたよぉ」

「あぁ。そういえば、今はうまくいってるの?」

「うん。やっぱり夏樹くんは優しい人だね。ちょっと忙しいのが玉に傷だけど、しょうがないもんね。新しい事に挑戦してる人って、やっぱいいよぉ」

幸せそうな佳奈に微笑んだ。

「ちゃんとつきあえて良かったじゃないの」

「うん」

佳奈はそこで、ちょっと迷ったように顔をしかめた。

「マネージャーとうまく行ってないの?」

「桐生さんと? 仕事はちゃんとやってるけど?」

「じゃなくてぇ。桐生さんて、確実にさなちゃんのこと好きだと思うんだけど」

「そういう意味でうまくいくも何も、仕事上だけのお付き合いだし?」

佳奈は顔をしかめてビールを飲んだ。

「さなちゃん。桐生さんを遠ざけてるでしょう。私はけっこうあの人一途だと思うんだけどなぁ」

「……別に、そういうのは望んでないんだな」

「そう? けっこう面白いと思うよ」

「ねぇ、恋愛ってさ、思いが互いに返ってくるから、恋愛って言うんだって、なんかの本に書いてあったんだよね」

「……うん?」

解るような解らないような、複雑な表情で佳奈は頷いた。

「思いが片方だけなら、もちろん片思い。恋愛になりはしないって、ちょっと面白くないよね?」

「というか、返してあげてないのは、さなちゃんだと思うんだけど」

「あー……。それは仕方ないよ。返すものがないんだから」
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