雪降る夜に教えてよ。
「そんなことないよ! さなちゃんは愛情深いもん」

「残念ながら。友情と愛情は別物だよ。友情はあっても、愛情はあげられないな」

「なんで?」

なんでって言われてもなぁ。佳奈を見ながら小首を傾げた。

「多分。持ち合わせている愛情が少ないからじゃないかな? あげたら何も残らなくなっちゃう。だからあげられない。差し出した愛情が消えたら、私は私で無くなるような気がするんだ」

佳奈はなんとも言えない顔をする。

「だから、少し疲れたかな……いろんな事が、ちょっとづつ疲れてきた」

「でも、大切なことだよ」

「だから、そういうのは無視してるんでしょう? いっぱい愛情もらっても私には返せないんだもの」

「でも。さなちゃ……」

言い募る佳奈に片手を振って、話題を替えることにした。

「他のことの話しをしようよ。佳奈は忘年会行く?」

「行くよ。だって、そのために毎月給料天引きされてるんだもん! ちゃんと飲み食いしなきゃ損だよぉ」

「今年のビンゴ商品は何かな~。掃除機だったら嬉しいな~」

「ええ!? そんなのおもしくないよぉ」

「や。去年の商品はいきなりワープロソフトだったじゃない。今時ワープロ持ってる人は少ないでしょ」

パソコン全盛のご時世に、どうして景品がワープロなのか、選んだ人の年代を疑ってしまうけれど。

「あれは嬉しくなかったよねぇ」

他愛もない話で盛り上がりながら、いつもよりもお酒の量は増え。

私にしては珍しく、かなり酔っ払いになっていた。





***


「あー……雪だ」

ぼんやり空を眺めている私の後ろで、佳奈と、佳奈を迎えに来ていた夏樹さんが顔を見合わせていた。

「秋元さんが酔っ払いってパターンは珍しくない?」

「うーん。さなちゃんにしては、たくさん飲むなぁと思ってたんだけど、いつもと逆な立場で、つい見過ごしちゃったっていうか?」

「本人はあれで楽しいのかな? 全然楽しくない顔してるけど」

「さなちゃん無表情だけど、あれでも楽しそうだよ。解りにくいと思うけど」

「てかさ。これ以上ここにいたら、秋元さんの悩める元凶が来ると思うんだけど」

「ええ⁉ 呼んじゃったの⁉」

「いや。俺が帰るとき、もう少ししたら上がるって言ってたから。ここ、帰り道だし」

「まずいよソレ。さすがに暴れちゃうよ」
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