雪降る夜に教えてよ。
そんな会話にも全く気付かずに、私はそのまま空を眺めていた。

「さなちゃん! 送っていくから、すぐに帰ろう?」

「まだ居たいな」

雪が綺麗だし。冷たい風がどことなく心地いいし。

「そんなこと言わないで、帰ろうよ。夜は危ないし、雪も降ってきたし」

「だから、なおさら楽しいんじゃない?」

「や。これ以上いたら、きっと楽しいどころじゃないとおも……」

佳奈の目が驚きに見開かれた。

何だろう? と、思う暇もなく、視界が急に高くなる。

「要するに、彼女は酔っ払いだね?」

低い声にビックリして瞬きを繰り返した。

えーと……聞き覚えが確実にあるんだけれど。これは幻聴?

「週末だから早く帰したのに、君は飲んだくれていたのか?」

足元はブラブラするし、なんだかお腹は押さえられてるし。そして見下ろすと佳奈は顔を覆ってるし?

振り返ると、鋭い目付きの桐生さんと目が合ってギョッとした。

「は……っ離して‼」

「嫌だね」

……って、なんか妙に迫力があって恐いんですけど!

「離して離して離して!」

抱き上げられてるなんて冗談じゃなくて、思い切り暴れたら、手が桐生さんの頬に当たった。

思い切り音が鳴るくらいに。

「あ……っ」

むっとしたような視線が見える。

「前に、ちゃんと忠告したからな?」

前に……? 何を言っていたかな?

思い出す間もなく、眼鏡を奪われて、桐生さんの唇が私の唇に触れた。

「……んぅ!」

同時にぎゅっと身体を引き寄せられ、熱い唇の強引さに微かに喘ぐ。

開いた唇から舌が入り込み、桐生さんか吸う煙草の苦さが広がった。

「んっ……!」

息苦しさに一瞬だけ離れた唇は、すぐにまた唇で塞がれる。

身体中の力を全部吸い取られてしまったかのように、それ以上なんの抵抗もしないまま、口内を蹂躙されていった。

そして、ようやく唇が離れた頃には、息も絶え絶えになっていて、だらりと桐生さんにもたれかかる。

「目が覚めたか?」

さ、最初から覚めているし!
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