雪降る夜に教えてよ。

結晶

*****


バタバタとした殺人的スケジュールもやっと終わりを告げ、私は仲良くテーブルを片付けている佳奈と夏樹さんを眺めていた。

「ね~。ホントに手伝わなくていいのぅ?」

お手伝いはいりません。

佳奈に頼んで、真っ黒に焦げ付いた鍋を見つつ首を振った。

肉じゃがすらまともに作れないのか、と痛感。

「佳奈、これ運んで、夏樹さんはベランダに出てるボトルをそろそれ中に入れてください」

『はぁ~い』

二人揃って間延びした、ある意味ではいいお返事が帰ってきた。

夏樹さんはベランダから日本酒の一升瓶と、焼酎の瓶を取り出して、目を丸くしている。

「なんか、女性の部屋にあるものには見えないものが出て来た」

それは貴方の彼女が数日前にくれたモノですが?

「私は飲みませんからね。二人で責任持って、飲み干してくださいよ。せめて焼酎は」

日本酒なら料理に使っちゃうけど。

カセットコンロをテーブルに置いて、夏樹さんの少し考える風な顔を見る。

「何か?」

「いやぁ。本当に桐生さん来るのかなと思って」

「仕事納めの帰り際は来るって言っていましたけど」

ちょっと生返事で、超忙しそうにもしていたけれど。

「女史と桐生さんはまだ付き合ってはいないんだよね?」

「佳奈と夏樹さんのような……という意味でしたら、そういうお付き合いはしていませんけど」

「それなのに、よくぞ鍋をチョイスしたよね?」

冬の日本の定番だし。結構簡単なものなんですよ、お鍋料理って。

「おかしいですかね?」

「うん。女の子は、けっこう嫌がるでしょう? 箸つっこむし」

「夏樹さんだって、箸入れるでしょうが」

「それもそうなんだけど」

インターフォンがなって、パタパタと玄関に向かう。桐生さんの声が聞こえてきたからドアを開け、無表情に固まった。

「どうかした?」

や。確かに仕事はもう休みに入っていて、スーツじゃないのは当たり前で。桐生さんは色の濃いジーパンに、黒のレザージャケットで合わせて、何故か大きなボストンバックを肩に担いでいる。
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