雪降る夜に教えてよ。
第二章
春空
*****
季節は早くも春。空気は暖かく、街にカラフルな色があふれ出す季節。
「おはようございます」
「ああ。おはようございます」
いつもの通りに顔見知りの警備員さんに挨拶をして、私は駅前で買った花束を一つ差し出す。
「どうぞ。守衛室に飾ってください」
「え。いいんですか?」
初老の警備員さんは少し目を丸くしながら、花束を受け取ってくれた。
「華やかでしょう? つい買っちゃって」
「ああ、春ですからねぇ」
警帽を外して頭を下げる警備員さんに一礼して、エレベーターホールに着く。
いつもより人が多い気がするけれど、なんだか緊張した顔が多いな。
「おはようございます」
一声かけると、目の前の一団がバッとに振り返った。
『おはようございます』
一斉に返ってきた挨拶に、少しどころか大いに驚いて退いた。
ぐ、軍隊ですか!?
呆気に取られているうちに、少しだけ騒めきながら一団は到着したエレベーターに乗っていく。
そして鳴ってしまう定員オーバーのブザー。
一人の男性が降りて来て、私の隣に並ぶ。
その人は、やっぱりちょっと緊張した印象を受けるけれど、ぶら下がっている社員証を見て納得した。
所属も何もない入館証は、本来ならお客様専用。
でも、ここは社員用のエレベーターだから、きっと新入社員だろう。
そういえば、今日は新入社員ガイダンスだったかもしれない。
「今日は偉い人が顔を出すだけよ。何百人と新入社員がいるんだから、そんなに個人は見ていないと思う」
彼は驚いたように私を見た。
「え!?」
「今日はどうせ簡単な紹介だけ、落ち着いて望めばいいと思うから」
次のエレベーターが来たので乗り込むと、立ち止まったままの彼を振り返る。
「乗らないんですか?」
「あ。いえっ、乗ります」
新人ガイダンスの会場は確か三階ホールだよね。
オフィスのある階と一緒に、三階のボタンを押してあげる。
新卒かな~。若いと言うか、幼いと言うか。
いや、大人でも子供な人もいるしな。
桐生さんの事を思い出しながら三階につくと、新人さんは素早く降りて、くるっと振り返り、最敬礼みたいにビシッと立った。
季節は早くも春。空気は暖かく、街にカラフルな色があふれ出す季節。
「おはようございます」
「ああ。おはようございます」
いつもの通りに顔見知りの警備員さんに挨拶をして、私は駅前で買った花束を一つ差し出す。
「どうぞ。守衛室に飾ってください」
「え。いいんですか?」
初老の警備員さんは少し目を丸くしながら、花束を受け取ってくれた。
「華やかでしょう? つい買っちゃって」
「ああ、春ですからねぇ」
警帽を外して頭を下げる警備員さんに一礼して、エレベーターホールに着く。
いつもより人が多い気がするけれど、なんだか緊張した顔が多いな。
「おはようございます」
一声かけると、目の前の一団がバッとに振り返った。
『おはようございます』
一斉に返ってきた挨拶に、少しどころか大いに驚いて退いた。
ぐ、軍隊ですか!?
呆気に取られているうちに、少しだけ騒めきながら一団は到着したエレベーターに乗っていく。
そして鳴ってしまう定員オーバーのブザー。
一人の男性が降りて来て、私の隣に並ぶ。
その人は、やっぱりちょっと緊張した印象を受けるけれど、ぶら下がっている社員証を見て納得した。
所属も何もない入館証は、本来ならお客様専用。
でも、ここは社員用のエレベーターだから、きっと新入社員だろう。
そういえば、今日は新入社員ガイダンスだったかもしれない。
「今日は偉い人が顔を出すだけよ。何百人と新入社員がいるんだから、そんなに個人は見ていないと思う」
彼は驚いたように私を見た。
「え!?」
「今日はどうせ簡単な紹介だけ、落ち着いて望めばいいと思うから」
次のエレベーターが来たので乗り込むと、立ち止まったままの彼を振り返る。
「乗らないんですか?」
「あ。いえっ、乗ります」
新人ガイダンスの会場は確か三階ホールだよね。
オフィスのある階と一緒に、三階のボタンを押してあげる。
新卒かな~。若いと言うか、幼いと言うか。
いや、大人でも子供な人もいるしな。
桐生さんの事を思い出しながら三階につくと、新人さんは素早く降りて、くるっと振り返り、最敬礼みたいにビシッと立った。