雪降る夜に教えてよ。
「……って、何よ! そのデカくてふてぶてしい態度は!」

いつもと変わらない……。

そうか、私はいつもふてぶてしいという事かな。

て言うか、面倒くさいなぁ、もう。

「土橋さんが何を言っているのか解りませんが、これは仕事です。もし、土橋さんがシステムヘルプデスクを手助けして下さるのでしたら、私も嬉しいんですけど」

土橋さんの顔が面白いくらい、空虚になった。

「は?」

「やっぱり上司と付きっきりって、気詰まりじゃないですか。出来るのでしたらもう一人くらい手伝って貰えると……非常に助かります」

「む、無理に決まってるじゃない! システムなんて私に解るはずないでしょ」

そうですね。あなた、ネットショッピングデスクですし。

「つまり、マネージャーはシステムが解るから、仕事を手伝って下さっているのでしょう。では、私はこれからお昼に行きますので」

するりとかわしてオフィスを出る。

まったく。そういう事にしか頭が回らない訳?

そりゃ~。こういう会社で男の人を捕まえれば、玉の輿だわね。
そういう社員が多いのは知ってたけど、あそこまで必死にならなくてもいいのに。

私は興味ないんだから。

考えごとをしながら、社員入口を出た時。今日が雪降りだったって事をすっかり忘れていた。

朝から今までに何十人と通った入口前はツルツルで、オフィス街のこの街はビル風が強い。突風が直撃してバランスを崩した。

「あっ……」

身構えた時にはすでに遅く、身体がちょっと浮いた。

雪山に突っ込むか、もしくは尻餅つくか。

覚悟を決めた時だった。

がっしりと何か暖かいものに支えられる。

恐る恐る目を開けると、私は雪山に突っ込んでも尻餅をついてもいなくて、それどころか、足が宙に浮いていて。

横を見ると、心底ビックリしたような、桐生さんと目が合った。

……片手で担がれていますけど、私。

しばらく抱えられたままで、無言で見つめあう。

それから桐生さんはゆっくりと私を路面に下ろし、ポンポンと両肩を叩いてくる。

そして肩に手を置いたままで、俯いた。

えーと……あの?

「あっははははは!」

……爆笑されてますねー。

体勢を直してから、目を細めて桐生さんを睨んだ。
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