雪降る夜に教えてよ。
***



「で。あんた桐生マネと、どうなってんのよ」

早良さんはそう言って、ランチのパスタを口に運ぶ。

どうって言われても。どうなってるのかこちらが聞きたいかも。

残業で遅くなると必ず送ってくれる。
土日のどちらかが空いていれば、たまーに佳奈と夏樹くんと4人で食事に行く。

そんな感じ?

「ちょっと。あんた何一人で納得してるのよ」

そう言われても、自分でも何とも言えない。

「や。あんな感じです」

こんな説明で解るかな?

「進展なしなの? まぁだダブルデートなんてしてるわけ? シス管になって、もう半年以上経つのじゃないのさ」

早良さんってすごい……今ので解ったらしい。

でもそうなんだなー。思えば半年か……佳奈と夏樹くんて久しぶりに長続きしてるなぁ。

気がついたことを今さらながら考えていたら、早良さんに、今度はメニューで叩かれた。

「……痛い」

叩かれた頭を撫でながら、私はハンバーグを口に入れる。

「あんた達は中学生のカップルかっつーの」

「やだなー。中学生は居酒屋には入れませんよ」

「んじゃ、仕事帰りで疲れきったおやじさんのデート?」

「桐生さんは仕事帰りでも疲れてないみたいですよ」

「精力絶倫ぽいもんね~。桐生マネは」

そうなの!?

「スマホをトイレに落としちゃった、みたいな顔してるわよ?」

それは、どんな例えなんですか。
だけど、心境としては近いものがあるかも。

大事なものなのにどーしよ~。みたいな?
拾う? 拾えば大丈夫? みたいな。
ヤバイ。困ったぞ~的な感じ?

「あんた、そこらへんは何も考えてなかった訳なのね?」

だって普通だし。

「土橋でさえも感づいてるのに、なんであんたが気付かないかな~」

「何をですか」

「例えば、スーツの襟元を直してくれたり、話すときに何気に顔近づけてみたり、些細に男アピールしてるじゃないのさ」
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