雪降る夜に教えてよ。
桐生さんがぼやくように呟いて、パーテーションの外の様子を一度確認してから首を振った。
「直すスキルがあっても、物がなければ仕方ありませんよ」
「確かにね」
「ところで桐生マネージャー。後一時間で定時です」
おしゃべりしている暇はない。
彼は無言で苦笑すると、自分のモニターに向き直った……けれど、ノック代わりにパーテーションがノックされる。
「あっ。はい!」
慌てて顔を上げると土橋さんが立っていて、キッと私を睨み、気を取り直したように桐生さんに向かって笑顔を振り撒く。
とっても器用だ。
「桐生さん。よろしいでしょうか」
桐生さんは眩しいくらいの営業スマイルで土橋さんを振り返り、小首を傾げた。
「今、忙しいです」
今、手を止めて無駄口叩いていた人の言うことでしょうか? 心の中でツッコミを入れる。
「いえ、あの、杉本室長からのご伝言で、今晩このフロアで飲みに行きませんか?」
「や。僕は車ですし」
「我妻さんのお祝いなんです」
我妻さんて、お局様軍団の一人だったような。
思わず聞き耳を立ててしまう。
「来月、結婚退職されるので、そのお祝いを内輪でやろうという事になっていたんですけど。シス管も今日は定時あがりですし」
ああ。なるほど。
お祝い事のお誘いじゃ、マネージャーである桐生さんは行かないとね。
私には関係なーい。と聞き流していたら……。
「……秋元さん。今日は用事はあるかな?」
爽やかな声に手を止めた。
もしかして、私を巻き込む気ですか。
恐る恐る振り返ると、土橋さんの厳しい視線に、桐生さんの企み笑顔。
「今日は残業予定だったから、もちろんないよね?」
もちろんございませんけれどね?
「では、『シス管』で参加しますと、室長にお伝えください」
空々しいくらい爽やかにそう言って、桐生さんは土橋さんに背を向けた。
もうちょっとフォローしようよ!
もちろん、土橋さんは私を八つ裂きにしたい! みたいな視線を送ってきてました。
「直すスキルがあっても、物がなければ仕方ありませんよ」
「確かにね」
「ところで桐生マネージャー。後一時間で定時です」
おしゃべりしている暇はない。
彼は無言で苦笑すると、自分のモニターに向き直った……けれど、ノック代わりにパーテーションがノックされる。
「あっ。はい!」
慌てて顔を上げると土橋さんが立っていて、キッと私を睨み、気を取り直したように桐生さんに向かって笑顔を振り撒く。
とっても器用だ。
「桐生さん。よろしいでしょうか」
桐生さんは眩しいくらいの営業スマイルで土橋さんを振り返り、小首を傾げた。
「今、忙しいです」
今、手を止めて無駄口叩いていた人の言うことでしょうか? 心の中でツッコミを入れる。
「いえ、あの、杉本室長からのご伝言で、今晩このフロアで飲みに行きませんか?」
「や。僕は車ですし」
「我妻さんのお祝いなんです」
我妻さんて、お局様軍団の一人だったような。
思わず聞き耳を立ててしまう。
「来月、結婚退職されるので、そのお祝いを内輪でやろうという事になっていたんですけど。シス管も今日は定時あがりですし」
ああ。なるほど。
お祝い事のお誘いじゃ、マネージャーである桐生さんは行かないとね。
私には関係なーい。と聞き流していたら……。
「……秋元さん。今日は用事はあるかな?」
爽やかな声に手を止めた。
もしかして、私を巻き込む気ですか。
恐る恐る振り返ると、土橋さんの厳しい視線に、桐生さんの企み笑顔。
「今日は残業予定だったから、もちろんないよね?」
もちろんございませんけれどね?
「では、『シス管』で参加しますと、室長にお伝えください」
空々しいくらい爽やかにそう言って、桐生さんは土橋さんに背を向けた。
もうちょっとフォローしようよ!
もちろん、土橋さんは私を八つ裂きにしたい! みたいな視線を送ってきてました。