神様、どうか。


初めて訪れた役員駐車場でも、社長の愛車は素晴らしい存在感を放っていた。


社長が車のロックを解除すると、薄暗い駐車場に赤いランプが光を灯した。


駐車場は少しひんやりするな。


社長に促されるままに助手席へと乗り込んだ。


あと何回、この助手席に乗れるんだろう。


この席が私専用の席になったらいいのに。

なんて、調子に乗りながらシートベルトを締めていると、


「と言っても、まだ夕飯までは時間があるしな。」


社長がぽつりとそう呟く。


ああ、しまった。確かに夕飯には早い。
詰めが甘かった。



「ドライブでもするか?」

「え?」


それは突然で、そしてなんとも嬉しいお誘いだった。

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