神様、どうか。


「海綺麗ですね。」

「ああ、なんだか久しぶりに見たな。」


二人で潮風を浴びながら、しばらく海を見つめていた。



「すっかり日が長くなりましたね。」


ほんの一ヶ月前までは、この時間にはもう真っ暗だったというのに。


2月も半ばになると、まだ日も落ちかけだ。


「日の落ち具合で、四季を感じません?」


海から視線を離し、少し橙色に染まってきた西の空を見る。


「ああ。田舎にいた頃は、田んぼで季節を感じてたな。」

「田んぼ?」

「ああ。水の張った田んぼを見て春だと感じる。青々とした田んぼを見て夏を感じて、黄金色に輝く田んぼを見て秋を感じる。そして、すっかり寂しくなった田んぼを見て冬を感じてた。」


「へえ。」


懐かしそうに軽く目を閉じて語る社長は、きっと田舎を思い描いてるんだろうな。

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