神様、どうか。


「私の地元は早期米なので、春にはもう田んぼは青々としてました。」

「へえ、夏は?」

「夏はもう穂が実ってて、8月にもなると大体稲刈りが終わってました。」


小さい頃は、それが当たり前のことで、全国どこでもそうなんだと思ってた。


「君は九州出身だったか?」

「ええ。暑いんです。」

「酒がうまそうだな。」

「美味しいですよ。まあ、私焼酎飲めないですけど。」

「ははっ。何だそれは。」


楽しそうに笑う社長につられて私も笑った。


この前とは明らかに違う。
なんだろう、この心地がいい胸のドキドキは。


お互い笑い合っていると、社長はふと優しい顔をして耳を疑う一言を言った。


「一度行ってみたいな、君の故郷に。」

「へ?」

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