神様、どうか。
「奈々さん、ね。」
どうやら椿さんも奈々さんを知ってるみたいだ。
椿さんの少し伏せた目に、ごくりと唾を飲み込む。
「私も奈々さんとは何回かしか会ったことないんだけど、晃の同い年の幼なじみ。向こうのね。」
「向こうって、田舎ですか?」
「そうそう。晃が高校時代暮らしてた母の実家の裏の子。
そして、晃の高校時代の彼女。」
ああ、予感が当たってしまった。やっぱりそうか。
社長が昨日、スマホを見つめる視線でなんとなくそんな気がしていた。
「でもね、晃が会社に入ったころにはもう地元の人と結婚してるの。」
社長が会社に入ったのは、多分10年以上前。
継続中の関係じゃないことに、少し安心してしまう。
「ホッとした?幸子ちゃん、分かりやすすぎ。」
「え?」
ニヤニヤとそう指摘する椿さんに、心臓が激しく高鳴る。
「負けるな、幸子ちゃん!私は、幸子ちゃんの味方よ。」
両手でファイトポーズを作り、真剣な顔でそう言ってくれる椿さん。
なんだか最強の味方を手に入れた気がする。
神様、お札の効果ですか?