神様、どうか。
神様、どうかこの人を苦しめないで。
目の前に広がる浅葱色の海、純白の砂浜。
水上ヴィラのテラスで、爽やかな南国の風がカクテル片手に寛ぐ私の頬を撫でる。
ああ、気持ちいい。夢みたい。
ーーーーヒューピロピロピロ
え?なんの音?
突然鳴り響く音の正体を探ろうとすると、顔に硬い物体が落ちてくる。
「いった!なに、これ?」
拾いあげると、去年買った転げ回る目覚まし時計だ。
さっきまでリゾートにいたはずなのに、気づけばいつものアパート。
いままでの、南国での夢みたいな贅沢は本当に夢だったらしい。
ああ、あれだ。寝る前に見た、世界の絶景特集。
なんて単純なんだろう、私。