神様、どうか。
どうやら本当について行ってもいいらしい。
言葉で直接確認をしたわけではないけど、社長の態度がそう言っている。
気がする…。
でも、今は社長のそばに居たい。
それが私のわがままだとしても。
「椿さん、何か言われてました?」
運良く取れた社長の左隣の席に座って聞く。
「ああ。脳の血管が切れたらしい。
幸い大きな血管じゃなかったらしく、意識も戻ったって。でもまだ、一緒に住んでる叔父さんと叔母さんのことも分からないらしい。」
「…そう、なんですね。」
暗い顔でいる社長の手前、なかなか安易な発言はできないが、本当によかった。
命に別状がない、それがやっぱり一番だ。
「じいさんは7年前に亡くなって、最近は電話でも弱気な発言が多くなってたんだよ。もっと頻繁に行っとくべきだった。」
社長は絞り出したような声でそう呟くと、右手で顔を押さえたまま俯いた。
左手は、ズボンを握りしめており皺がよっている。
堪らず、社長の震えた左手を握りしめた。
神様、どうかこの人を苦しめないで。