神様、どうか。
そのとき、テーブルに置いていた智也さんのスマホが光った。
そこに表示されているのは、智也さんの奥さんの名前。
「あ、椿から連絡が。」
そう言って電話に出る智也さん。
そうか、ここは談話室だから携帯いいのか。
自販機横に貼ってある、『携帯電話使用可』の張り紙に納得する。
「ああ、わかった。うん、じゃあ。」
智也さんは通話を切ると、私と桃ちゃんに視線をやった。
「ごめん。椿から車の中にあるティッシュを取って来いって。だから、桃と」
「桃も行く!」
と、元気に手を挙げて発表する桃ちゃん。
ああ、愛くるしい。
「あ、じゃあ私先に戻ってますね。」
「ごめんね。」
私に一言謝って、エレベーターホールへと進んで行く親子の背中を見送って私も病室へと戻る。