神様、どうか。
廊下ですれ違った智也さんに、急用が出来たから帰ると伝えた。
智也さんは桃ちゃんの手を引いたまま驚いていたけど、私はそのまま足早に去ってしまった。
逃げたんだ。
でも、なにから?
社長から?それとも、奈々さん?
いや、自分の気持ちからだ。
奈々さんに嫉妬する醜い自分から、社長を好きだと思う純粋な気持ちから逃げたんだ。
そんな不毛な自問自答を繰り返しながら、重い足取りで家と帰る。
アパートに着き、自分の部屋に入り電気をつけるとそのまま倒れこんだ。
疲れた。今日はとにかく大変な1日だった。
ローテブルの上にあるスパイスボトルを見て1日の長さに驚く。
そうか、これを買ったのも今日の出来事か。
なんだか、すごく昔の話に感じる。