神様、どうか。


でも、もうなにも考えたくない。


「社長?社長なんて、もう知りませんよ。」


知らない。あんな殿上人。
もともと私とは住む世界の違う人なんだ。


「は?お前、社長のことが好きなんだろう?」

「好きじゃありませんよ。」


手に握ったままだった空のお猪口にお酒を注いで、またグイッと飲み干す。


「社長はね、今頃奈々さんと仲良くやってんですよ。」


ああ、自分で言って自分で傷つく馬鹿な私がまだ居る。


「誰だよ、奈々って。」

「社長の元カノですよ、元カノ。」

「…ふーん。」


赤木さんは手元のお猪口を見つめながら聞く。

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