神様、どうか。


私は今夜、相当酔っているらしい。

幻覚が見える。


「お客さん、どちらまで?」


中々行き先を伝えないので、痺れを切らした運転手さんが少しイライラしたように聞いてくる。


すると、社長が行き先を告げた。


でも、社長が運転手さんに伝えたのは私の住所じゃない。


私のアパートの住所言わなくちゃ。

いや、違う。アパート近くのマンションの方だ。


例えこの社長が幻覚でも、あのアパートを見て引かれたくない。


えーと、なんだっけあのマンションの名前。


「あ!サンスカイマンション中央公園前で!」

「どっちですか?」

「サンスカイの方で!」

「おい。」


幻覚の社長は低い声で咎めるが、取り敢えず聞かなかったフリをする。

これはきっと、幻聴だ。

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