神様、どうか。
私の指示したマンションへと向かう車内では、社長の幻聴がなかなか消えない。
でも、その低くて心地の良い声に、心底安心してなんだか眠くなってきた。
「お客さん、着きましたよ。」
私の眠気を遮るようにタクシーが停車した。
「なんだかよく分からないけど、ありがとうございました。」
運転手さんにお金を支払い、一応幻覚の社長にお礼を言うと、社長の制止も聞かずに降りる。
とりあえず家に帰りたい。ベッドで寝たい。
フラフラする足取りでなんとかアパートの階段を上がる。
あれ?私の部屋どこだっけ?
扉に表示されている部屋番号をみると、ここは201号室。
私は202号室だ。ここの隣だ。
ーーーードン
鈍い音が脳内に響いて、一瞬息が詰まった。