神様、どうか。


私の指示したマンションへと向かう車内では、社長の幻聴がなかなか消えない。


でも、その低くて心地の良い声に、心底安心してなんだか眠くなってきた。


「お客さん、着きましたよ。」


私の眠気を遮るようにタクシーが停車した。


「なんだかよく分からないけど、ありがとうございました。」


運転手さんにお金を支払い、一応幻覚の社長にお礼を言うと、社長の制止も聞かずに降りる。


とりあえず家に帰りたい。ベッドで寝たい。

フラフラする足取りでなんとかアパートの階段を上がる。


あれ?私の部屋どこだっけ?


扉に表示されている部屋番号をみると、ここは201号室。

私は202号室だ。ここの隣だ。


ーーーードン


鈍い音が脳内に響いて、一瞬息が詰まった。

< 238 / 284 >

この作品をシェア

pagetop