神様、どうか。
「っ痛ぁ。」
鼻にとんでもない衝撃が走って、そのままその場にしゃがみ込んだ。
何が起こったか分からないけど、鼻がジンジンする。
「お姉さん、大丈夫っすか?!」
見たことのあるような青年が、慌てて駆け寄ってきた。
「すんません、俺かなりの勢いで扉開けちゃって…。」
あ、思い出した。この子、お隣の大学生だ。
お隣さんに扉をぶつけられたのか。
やっと状況が飲み込めた。
大丈夫、そう言って立ち上がろうとすると、
「うわ、お姉さん鼻血。」
青年がびっくりした顔をしながら指摘した。
確かに鼻からは生温かい感触。
最悪だ。もう、嫌だ。
そう思ったとき、頭上からまた幻聴が聞こえた。
「君は…。本当によく面倒ごとに巻き込まれるな。」
振り返ると、妙にリアルな社長の幻覚。