神様、どうか。


「っ痛ぁ。」


鼻にとんでもない衝撃が走って、そのままその場にしゃがみ込んだ。


何が起こったか分からないけど、鼻がジンジンする。


「お姉さん、大丈夫っすか?!」


見たことのあるような青年が、慌てて駆け寄ってきた。


「すんません、俺かなりの勢いで扉開けちゃって…。」


あ、思い出した。この子、お隣の大学生だ。


お隣さんに扉をぶつけられたのか。
やっと状況が飲み込めた。


大丈夫、そう言って立ち上がろうとすると、


「うわ、お姉さん鼻血。」


青年がびっくりした顔をしながら指摘した。

確かに鼻からは生温かい感触。

最悪だ。もう、嫌だ。


そう思ったとき、頭上からまた幻聴が聞こえた。


「君は…。本当によく面倒ごとに巻き込まれるな。」


振り返ると、妙にリアルな社長の幻覚。


< 239 / 284 >

この作品をシェア

pagetop