神様、どうか。
「それよりここ、思ってたよりボロいアパートやね。」
「ほんと。前のマンションが良かった。なんで引っ越したの、お姉ちゃん。」
口々にこのアパートの悪口を言いだす二人。
なんでこのアパートみんなに嫌われるんだろう。
確かに前のマンションより、かなり格は落ちてるけどさ。
それに、
「お母さんと道子が反対したんでしょう?隣人が泥棒なんて気味が悪いから引っ越せって。
私は、逮捕されたから大丈夫って言ったのに。」
私は引っ越す気なかったのに。
「えー、そうだったっけ?」
そうですよ。もう、本当にこの二人は似た者同士だな。
自分に都合の悪いことは覚えてないっていうか。
「あ!そうだ。お姉ちゃん、ショッピング連れてってよ。銀座行きたい銀座!」
「私はね、あれ!あんたが去年、母の日に送ってくれたストールのお店に行きたい。」
方向正反対だし。
その賑やかさに、まるで実家に帰ったかのような錯覚に陥る。
ああ、やっぱり家族っていいな。