神様、どうか。


「それよりここ、思ってたよりボロいアパートやね。」

「ほんと。前のマンションが良かった。なんで引っ越したの、お姉ちゃん。」


口々にこのアパートの悪口を言いだす二人。
なんでこのアパートみんなに嫌われるんだろう。

確かに前のマンションより、かなり格は落ちてるけどさ。


それに、

「お母さんと道子が反対したんでしょう?隣人が泥棒なんて気味が悪いから引っ越せって。
私は、逮捕されたから大丈夫って言ったのに。」


私は引っ越す気なかったのに。


「えー、そうだったっけ?」


そうですよ。もう、本当にこの二人は似た者同士だな。

自分に都合の悪いことは覚えてないっていうか。


「あ!そうだ。お姉ちゃん、ショッピング連れてってよ。銀座行きたい銀座!」

「私はね、あれ!あんたが去年、母の日に送ってくれたストールのお店に行きたい。」


方向正反対だし。

その賑やかさに、まるで実家に帰ったかのような錯覚に陥る。

ああ、やっぱり家族っていいな。


< 265 / 284 >

この作品をシェア

pagetop