神様、どうか。
心の準備も出来ないまま、気づいたら目の前まで到着していた。
心臓が、痛い。
「彼女ってこの人?」
「ああ。」
「なによ、このおばさん。」
ふーん、と鼻をならしながら値踏みをするように私を見るご令嬢。
すっごく怖いです。もう、やめて!
ていうか、おばさんって。
まあ、この歳の子からすれば十分正解か。周りは、ほとんど大学生だと思われるし。
やっぱり指をすごく見られてる気がする。仕事上ネイルは出来ないけど、手入れは念入りにした。
就職祝いにお母さんに買ってもらった指輪は、私が持ってる中で一番高い指輪だ。まあ、金持ちからしたら安物だろうけど。
「ーーーあの、」
意を決して、私が言葉を発そうとした時。
彼女は社長からワイングラスを奪い取り、私の顔にぶち撒けた。
ひっ、と周りから出た短い悲鳴が濡れて冷たい耳に届く。
この展開は予想していたけど、やっぱり私はあなたに問いたい。
神様、私のこと嫌いですか?