神様、どうか。

送り先は、またコンビニで良いと言ったが譲って貰えず、アパート近くの私とは何の関係もないマンションの下まで送ってもらった。


「今日は本当にすまなかった。」


最後に嫌味のひとつでも言ってやろうと息を吸い込んだとき、予想外に社長が謝ったので吸い込んだ息を飲み込む。

そして、大事なことを思い出した。


あ、このひと自分の会社の社長だったんだ、と。


すでにとんでもない口を多々きいた気がする。


「いいえ、気になさらないで下さい。社長が悪いわけではないですし。」


一番悪くないの私なんだけどね。


「いや、また改めてお詫びはさせてもらうよ。」


とんでもないと頭を振りながら、では、ボーナスアップでお願いしますと懇願している私がいる。

そのくらいしても鉢は当たりませんよ。


それから社長と別れると、ここの住人なんです、という顔をしながらマンションの入り口まで歩いて来た。
近くの植木にさりげなく隠れ、社長の車が去るのを見送る。


なんだか今日はとんでもない一日になってしまった気がする。


疲れた。

今夜はぐっすり寝れそうだ。



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