神様、どうか。
「間宮、その電話社長秘書の倉田さんからだ。」
私以外に聞こえないように、小声でそう囁く。
え、社長秘書?
ということは、社長からの用件だよね。
そして、中津ワイナリーご令嬢絡みだ。
ああ、やっぱりまだ終わらないのか。
鳴り響く電話を一瞬無視しようか、とも思ったけどそんなわけにもいかないので意を決して受話器を取る。
「お待たせしました、間宮です。」
『お疲れ様です。社長が呼んでらっしゃいます。今お時間ありますか?』
「は、い。すぐに参ります。」
……参りたくない。
でも、行かなきゃなあ。
受話器を置くと、自分の席に戻り電話中ずっと私のことを見ていた赤木さんに軽く頭を下げる。