神様、どうか。


「悪い、遅くなった。」

社長はそう言いながら、助手席へとエスコートしてくれる。


社長の傘の中で見たグレーのマフラーはカシミアで、私でも知っているイタリアのブランドのマークがついている。


さすが、殿上人。
全身から高級感が溢れてる。



「マフラー、触ってもいいですか?」

「は?」


運転している社長はかなり怪訝な顔だ。
そりゃそうだ。私、すっごく変なお願いしてる。

マフラーのあまりに高級感あふれる姿につい言ってしまった。

すると、社長はポイッと私にマフラーを投げた。


え?いいんですか?
社長の予想外の行動に驚きつつ、恐る恐るマフラーに触れる。


「わぁ!…柔らかい。すっごく気持ちいいです。」

「よだれ垂らすなよ。」

「垂らしませんよ!」


失礼な言葉に、運転席を見ると社長はフッと笑った。
その姿さえ、何かのCMみたいで格好いい。


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