神様、どうか。
ホテルが見えてきたとき、急に社長は真面目な顔になって言った。
「悪いけど、ややこしいことになっても困るから、今夜もそのまま恋人のフリで頼む。」
「あ、はい。」
そうだった。そんな設定なんだ、私達。
すっかり頭から抜け落ちてた。
「それと、ご令嬢にワインかけるなよ。
まあ、そのぐらいの権利はあると思うが。」
「私がそんなことすると思います?」
「君ならシレッとしそうだ。」
は?!失礼な。
というか、社長の中の私ってどういうイメージなの?
「…しませんよ、そんなこと。」
「なら良かった。」
なんなんだ、その安心しきった顔は。
私は人にワインなんてかけません!
かけられる専門なんだから。