神様、どうか。
「君はずっと自動ドアと喧嘩してたのか?」
「いや、今までずっとじゃないですよ?」
社長が送り届けてくれてから、まあまあ時間は経っている。
今までずっと開かない自動ドアの前で立っていたとは思われたくない。
「最初は、社長が来るまで待とうと思ってたんです。というか、別に喧嘩してたわけじゃないですし。」
「そうかそうか。」
絶対信じてない。
スタスタと進んでいってしまう背中を慌てて追いかける。
「ちょっと、社長!」
「社長じゃない。」
「あ。」
そうだった。ここでの私達は、雇い主と
労働者じゃない。
彼氏と彼女、恋人同士だ。
「…気を付けます。」
社長を名前で呼ぶのはやっぱり抵抗がある。
なるべく名前を呼ばないような会話に努めなきゃ。