神様、どうか。
そう、今は本当にそれどころじゃない。
だって目の前に、ついこの間私にワインをかけた張本人が座ってるんだから。
「本当に申し訳ありません、忙しいところ。…えっと。」
二人とも席に着き、ウェイターさんが去って行くとご令嬢の隣の男性も席に着きながら今度は私の方へと頭を下げる。
ただ、私の名前がわからないようだ。
「間宮 幸子です。こちらこそ、こんな素敵なレストランにご招待していただきありがとうございます。」
さっきとは別の意味でバクバク言っている心臓を必死で治めながら、冷静に挨拶してみる。
心臓が口から出そうなのバレてないかな?
声が震えなかったのは、完全に年の功だ。