神様、どうか。
絢香さんとは、今日は一度も直接会話はしてない。
食事中もほとんど相川さんが一人で喋っていたようなものだし。
だから絢香さんの声を聞くこと自体、前半の謝罪と、それからあのパーティでの『なに、このおばさん。』以来なのだ。
正直言うと、絢香さんがちょっと怖い。
覚悟はしてても、いきなりおばさん呼ばわりされて、いきなりワインかけられたら軽くトラウマだよ。
なので、
「…失礼します。」
おばさんは逃げさせていただきます。
頭を下げながら、絢香さんの横をすり抜ける。
どうか、呼び止められませんように。
「あの、」
背後から絢香さんの声。
ああ、呼び止められてしまった。