甘々王子と黒王子
「あの人、知り合いですか?」

私は努めて明るく聞いた。

ただの知り合いじゃないってことは分かる。

「準、大きくなったわね」

女性は親しく先輩に声をかける。

「恵ちゃん……
ごめんね
今日は先に帰って」

「え……でも……」

「母親の旧い友人なんだ。
だから……」



先輩、嘘吐いてる。

「本当は何なんですか……」

「本当のことだよ。
だから帰って」

私は唇を噛む。

嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ

でも

何て言えばいいの?

先輩の私への嘘。

どうやって受け止めればいいの?

優しさ?それとも……拒絶?


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