嫉妬深い狼と結婚生活⁈
そう思いながら
次の講義の場所に移動するため
階段を下りていくと、
同じテニスサークルの槙田と
ばったり鉢合わせた。
「うぃーっす真樹。
何、お前これから下で講義なの?」
「おう。」
「へぇー。
…つかさ、お前あの話知ってる?」
「…あの話?」
階段で互いに立ち止まり
少し話し込む俺たち。
『あの話』と言いながら
どこか顔を強張らせる槙田に
俺は何となく嫌な予感がした。
槙田が若干視線を逸らしながら
ボソッと告げる。
「さっき龍之介が、濱崎っぽい奴を
大学のキャンパス内で見かけたって言ってたんだよ。」
「───!!」
それを聞いて、俺は目を見開いた。
───濱崎が、この大学にいる?今?
頭がそう理解すると
俺は中から湧き上がってくる
この嫌悪感に 息苦しさを感じた。
…何であいつが、ここにいんだよ…!!
ユカリちゃんは3限からと言っていたし、
多分まだ大学に来ていない。
なのにどうして…
あいつ1人で来てるのだろうか。
それとも誰かと同伴か…?
にしても、意図がわからない。
「1人だったのか?濱崎は。」
「いや、誰かといたらしいけど
もう1人は分かんねぇって言ってたな。」
まぁ龍之介も遠目から見かけただけらしいからな。
と槙田は言いながら
俺の背中をポンッと叩いた。
「まぁ会っても無視すりゃいーさ。
あんま当てにしなくても良さげだけど、一応伝えたからな?」
「…おう、さんきゅ。」
槙田とそう言葉を交わすと、
槙田はそのまま上へ上がっていき、
俺はそのまま下へ下りる。
…胸のざわつきは止まないままだった。
(くそっ……噂をすれば、ってやつかよ。)
俺がユカリちゃんのことで
後悔してる時に…現れるなんて。
つくづく相性が悪いと思いながらも
俺はそのまま
2時間目の講義に向かった───。