ETERNAL CHILDREN 3 ~闇の中の光~
1 ユカ
乱れる吐息。
軋むベッド。
ユカは目を閉じながら、その時が来るのを待った。
自分を貫く欲望が、何度も奥を穿つ。
それに合わせて自分の快感も高まっていく。
「っ!!」
最後に大きく男が身を震わせた時、ユカもまた果てた。
震える欲望を何度も中が締め付ける。
余韻に浸るように、ユカは目を閉じて呼吸を整える。
上にいた男が名残惜しげに離れても、動かなかった。
「なあ、今日はここで眠ってもいいか」
その言葉に、ユカは目を開けて、隣に横たわる男に視線を向けた。
自分より二つ上で〈夫〉であるアズマ。
優しげな顔立ちがユカを見つめている。
「アズマ、駄目よ。それはルール違反だから」
ユカの言葉に、アズマは小さく笑った。
「――だよな、そう言うと思ってたよ」
そう思っていたのなら、なぜ聞くのだろう。
ユカはぼんやり思ったが、口には出さなかった。
「シャワーを借りるよ」
身体を起こして、男は床に散らばる自分の衣服を取り、浴室へと向かった。
僅かな水音を聞きながら、ユカは先程のアズマの問いを考えた。
一緒に眠って、何がいいのだろう。
確かに二人で眠っても余裕のあるベッドの大きさだが、そんなことは〈夫〉達の誰ともしたことがない。
一緒に眠ったら身動ぎも安心して出来ないし、もしもぶつかったら気まずいだろう。
何より、自分の部屋の方が一人で落ち着いてゆっくり眠れる。
デメリットが多いだけで、メリットは一つもない――そう結論づけて、ユカは身を起こした。
どうせ自分もシャワーを浴びるからと簡単に下腹を拭い、下着は着けずにワンピースを床から拾って着る。
それから、ベッドのシーツと上掛け、枕カバーを落ちていた下着とまとめて寝室を出、入口近くのクローゼットを開くと埋め込み式の大きなランドリーボックスへと押し込む。
その上の戸棚には、新しいシーツと上掛け、枕カバーが常に備え付けられている。
夜毎この部屋を訪れる〈夫〉達への配慮として。
ユカは新しい寝具を手に寝室へ戻り、シーツを張り替え、枕カバーをかけ、上掛けを敷く。
急ぐことでもないし毎度のことなのでのんびり作業を終えると、その頃にはもう浴室のシャワーの音はしなくなっていた。
「行くよ」
開いたままの寝室のドアから顔を覗かせたアズマに、
「ええ、また」
振り返ってユカが答える。
何か言いたげなアズマが去るのを敢えて待つ。
優しい顔立ちが、少し苦しげにも見えた。
暫し躊躇った後、アズマは何も言わずに出て行った。
「――」
ここ最近のアズマの様子はいつもこんな感じだ。
さっきのように変なことを言ってみたり、そうでなければ何か言いたげにしてみたり――ユカには〈夫〉の一人であるアズマの行動が理解できなかった。
今日を逃せば、また一週間はアズマの番は回ってこない。
どの〈夫〉も平等に扱うのがルールだ。
特別扱いなど、したこともないしする気もない。
言いたいことがあるなら、はっきり言えばいいのに。
だが、言ったとしても、きっとそれはユカに叶えられるものではないのも、うっすらとわかっていた。
だからこそ、自分からは何も言わない。
気づかない振りをし続ける。
何でもない振りなど、自分にはいつものことなのだから。
穏やかないつも通りの日常を過ごせばいい。
ユカは気持ちを切り替えた。
浴室に向かうと、使ったばかりの室内の生温い湿った空気に眉を顰める。
換気をしても追いつかない他人の使用感が、わずかな嫌悪を抱かせるのにも慣れた。
手早くべとついた身体にシャワーを浴びて、新しいタオルで身体を拭く。
何も身に付けずに寝室に戻ると、ユカは新しいシーツと上掛けの中に滑り込み、眠りに就いた。
軋むベッド。
ユカは目を閉じながら、その時が来るのを待った。
自分を貫く欲望が、何度も奥を穿つ。
それに合わせて自分の快感も高まっていく。
「っ!!」
最後に大きく男が身を震わせた時、ユカもまた果てた。
震える欲望を何度も中が締め付ける。
余韻に浸るように、ユカは目を閉じて呼吸を整える。
上にいた男が名残惜しげに離れても、動かなかった。
「なあ、今日はここで眠ってもいいか」
その言葉に、ユカは目を開けて、隣に横たわる男に視線を向けた。
自分より二つ上で〈夫〉であるアズマ。
優しげな顔立ちがユカを見つめている。
「アズマ、駄目よ。それはルール違反だから」
ユカの言葉に、アズマは小さく笑った。
「――だよな、そう言うと思ってたよ」
そう思っていたのなら、なぜ聞くのだろう。
ユカはぼんやり思ったが、口には出さなかった。
「シャワーを借りるよ」
身体を起こして、男は床に散らばる自分の衣服を取り、浴室へと向かった。
僅かな水音を聞きながら、ユカは先程のアズマの問いを考えた。
一緒に眠って、何がいいのだろう。
確かに二人で眠っても余裕のあるベッドの大きさだが、そんなことは〈夫〉達の誰ともしたことがない。
一緒に眠ったら身動ぎも安心して出来ないし、もしもぶつかったら気まずいだろう。
何より、自分の部屋の方が一人で落ち着いてゆっくり眠れる。
デメリットが多いだけで、メリットは一つもない――そう結論づけて、ユカは身を起こした。
どうせ自分もシャワーを浴びるからと簡単に下腹を拭い、下着は着けずにワンピースを床から拾って着る。
それから、ベッドのシーツと上掛け、枕カバーを落ちていた下着とまとめて寝室を出、入口近くのクローゼットを開くと埋め込み式の大きなランドリーボックスへと押し込む。
その上の戸棚には、新しいシーツと上掛け、枕カバーが常に備え付けられている。
夜毎この部屋を訪れる〈夫〉達への配慮として。
ユカは新しい寝具を手に寝室へ戻り、シーツを張り替え、枕カバーをかけ、上掛けを敷く。
急ぐことでもないし毎度のことなのでのんびり作業を終えると、その頃にはもう浴室のシャワーの音はしなくなっていた。
「行くよ」
開いたままの寝室のドアから顔を覗かせたアズマに、
「ええ、また」
振り返ってユカが答える。
何か言いたげなアズマが去るのを敢えて待つ。
優しい顔立ちが、少し苦しげにも見えた。
暫し躊躇った後、アズマは何も言わずに出て行った。
「――」
ここ最近のアズマの様子はいつもこんな感じだ。
さっきのように変なことを言ってみたり、そうでなければ何か言いたげにしてみたり――ユカには〈夫〉の一人であるアズマの行動が理解できなかった。
今日を逃せば、また一週間はアズマの番は回ってこない。
どの〈夫〉も平等に扱うのがルールだ。
特別扱いなど、したこともないしする気もない。
言いたいことがあるなら、はっきり言えばいいのに。
だが、言ったとしても、きっとそれはユカに叶えられるものではないのも、うっすらとわかっていた。
だからこそ、自分からは何も言わない。
気づかない振りをし続ける。
何でもない振りなど、自分にはいつものことなのだから。
穏やかないつも通りの日常を過ごせばいい。
ユカは気持ちを切り替えた。
浴室に向かうと、使ったばかりの室内の生温い湿った空気に眉を顰める。
換気をしても追いつかない他人の使用感が、わずかな嫌悪を抱かせるのにも慣れた。
手早くべとついた身体にシャワーを浴びて、新しいタオルで身体を拭く。
何も身に付けずに寝室に戻ると、ユカは新しいシーツと上掛けの中に滑り込み、眠りに就いた。