【⑤おまけ】オオカミさんの新婚事情 上司とイキナリ結婚したら。

「イヤ~、懐かしいなあ。何オマエ、結婚したの」

「まあね」

 私は得意気に答えた。

 彼こそが私の学生時代の元カレ、かつて2年間、同棲していた人である。
 
 そして卒業と同時に『遊びたい』と私を振った、トラウマ男だ。


 …ハジメテをあげたくらい好きだったのに。


 彼は、ここが最後の配達で『喉渇いた。』などと抜かしながら、フラりと家に入ってしまった。

 そういえば昔から図々しい人だった。


 私は少し焦ったが、今日、誰とも喋っていない寂しさと、
 『元カレに今カレを自慢したい!』
 という不純な動機から、彼にお茶を出してしまった。

 

「ハヤト君こそ。東京で働いてたんじゃなかった?」

「ああ。それがさ、倒産よ、倒産。俺、実家こっちでさ。…しかし、スゲエいい所住んでるじゃん、ダンナ、何やってる人?」


「ふっふっふ…」

 よくぞ聞いてくれました、とばかりに、
思いっきり自慢した。




「…何オマエ、熱でもあんの?」

 額に手を充ててくる。

「………」

 誰も彼も、カレの自慢話は、誰にも信じて貰えない。
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