【⑤おまけ】オオカミさんの新婚事情 上司とイキナリ結婚したら。
「赤野…いや、燈子」

「ひ、ひゃい、何でしょう?」
 
 と、とうこ…?

 彼がもう1歩近づく。
 あわせて後ずさった私の背中に、ヒヤリとしたガラスがぶつかった。

 2人の距離はあと1歩分。
 私を追い詰めると、彼はとうとうと語り始めた。


「まあ聞け、赤野…じゃねえや燈子。
 俺はこの間の送別会で、友人とある約束をした。オマエのよく知っている奴だ」

「もしかして……熊野さん?」

 震える声で尋ねた私に、彼はコクリと頷いた。

「その通り、オマエを奪り合った仲のアイツだ。
 さあ、何て言ったと思う?」


「イヤさっぱり……しかも奪り合われた記憶など、まるでありませんが」 


 彼は、口惜しそうに身体を震わせた。


「いいか?
『婚前交渉一切ナシ』『1ヵ月間女を絶って、ミソギを落とせ』だと、
 そんなことを抜かしやがったんだ‼」


 はあ?


「何それ、気色悪っ」

 私の叫びを無視して彼は続けた。


「それなのに、オマエときたら…」

 彼は息を吸い込んだ。
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