ウサギとカメの物語 番外編
東山美穂の物語

*彼女じゃなくてもいい*



あたしはどうせ、都合のいい女。


そんなの分かり切ってることであって、自分から言い出したことなんだから間違ってなんかいない。
たとえ他に本命の人がいたとしても、寂しいなって思った時にふと思い浮かべてくれるのがあたしであればそれで十分だって思ってた。


だって好きな人に求められるのってどんなに幸せなのか。
あたしは痛いくらいに知ってる。
周りが「そんなの間違ってる」なんて言ってきたって、この気持ちは変わらない。
あたしはずっと、あの人が好きだったから………………。








約半年前。
あたしは地元を離れて、県外の運送会社に就職した。
地元は嫌いじゃなかったけどもう少し都会に出てみたい気がしていて、だからと言って東京とか大都会に行くってなると両親も心配する。
だから今の土地を選んだ。
ちょうどよく都会と田舎が混在する街。


就職できれば会社はどこでも良かったし、ひとり暮らしできるくらいのちゃんとした固定給がもらえるところなら何でも良かった。
それで採用されたのが現在働いている会社というわけだ。


買い物でしか訪れたことのない街で1人で暮らし、なおかつ仕事もして自炊もして、会社の同僚から飲み会に誘われればなるべく参加して。
人間関係を良くしようと必死だった。
1人で生きていこうと必死だった。


そんなあたしに、優しく手を差し伸べてくれたのがあの人だった。




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