ウサギとカメの物語 番外編


「あ、そうだ。前に話したと思うけど、週末は高校時代の友達の結婚式に呼ばれてるから。たぶん二次会やら三次会やらで帰りは遅くなる」


結局、私のそばにあるクッション目がけてイモムシのように寝転んだまま近づいてきた順は、もふもふのクッションにドサッと頭を乗せて幸せそうな顔をしながら週末の予定を伝えてきた。


出た、結婚式。
もう今年何回呼ばれてるのよ。
私だってだいぶ招待されてるけれど、あんたの周りも相当結婚してるわよね。
それでなんにも思わないわけ?


「あ、そ。私は週末はコズとランチして買い物行く予定だから」

「会社でも会ってんのに休みの日も会うのか〜。本当に奈々は大野と仲いいよなぁ」

「大親友だもの」


今の会社での仕事は、まぁそれなりに楽しい。
大変なこともあるけれど人間関係に恵まれたから、全然苦じゃない。
一番の理由はコズに出会えたこと。
なんでも話せる親友と呼べる友達が近くにいるのはありがたいことだ。


コズは妊婦だけど安定期に入って、つわりも落ち着いてようやくいつもの食欲と元気が戻ってきたのだ。
あの笑顔いっぱいのコズが毎日具合が悪そうな青白い顔で仕事をしているのを見て、赤ちゃんを身ごもるのって素晴らしいけど大変なんだな、ってよ〜く分かった。
そのへんは事務課のリーダーをやってる二児の母でもある真野さんが配慮して、コズの仕事の負担をなるべく軽くしてあげることで乗り越えたんだけど。


一方の順だって、コズの旦那でもある須和と親友ってくらい仲がいい。
須和が本社から泉支店に異動してからも、時々2人で飲みに行ったりしているんだから。


私は男2人がどんな話をしているのか毎度気になっている。


そのー……、あのー……。


彼女の話とか、プロポーズの話とか、結婚の話とか。
そういう話題にはならないのかしらね?


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