ウサギとカメの物語 番外編
この際、はっきり言うと。
私は順と結婚したいのだ。
常に彼のプロポーズを待っているのだ。
いつでも嫁に行けるのだ。
3年の片想いを経て、ようやく彼と付き合えた。
そして順調に愛を育んで、ケンカもたまにはするけれど同棲もしている。
お互い30歳前後でまさしく結婚適齢期。
そんな中親友のコズが、僅か3ヶ月程で同期の須和と付き合うようになり(しかも問い詰めたら告白したのはコズの方だって言うじゃない!ビックリしたわ!)、1年もしないうちにまさかまさか、あの須和からプロポーズされたっていう驚き!
あれよあれよと入籍、結婚式!
さらには妊娠!!
人と比べちゃダメなのは重々承知なんだけど、どうしても心のどこかで比べてしまうのが私の性格。
妬みとか嫉みじゃなく、単純にコズが羨ましかったのだ。
だから、どうにかして順が「結婚」の二文字を意識してくれないかとヤキモキしているところで。
友達の結婚式に出席したり、須和から新婚話を聞いたりして、なにかしら感じるものは無いのかと問いただしたい。
必要最低限のことしか話さない聞き役の須和が、気の利いた新婚話を順にするとは思えないんだけどさ。
ほんの少しは期待してるのよ、ヤツに。
順に対しては、恋人としては申し分ない。
若干他の女どもに地味にモテるっていうのは置いておくとしても。
とにもかくにも優しいし、仕事だって熱心に取り組んで誠実にお客様と向き合ってるのは一緒に働いてるからよく知っているし、家事の手伝いに関しては非協力的だけどちゃんと自覚してるし、笑いのツボは一緒だし泣くツボも一緒だし、お互いにお酒好きだし、可愛いカフェにも付き合ってくれるし、カメラを向けると変顔してくれるし、「好きだよ」って時々きちんと伝えてくれるし、エッチも手を抜かないし、私を愛してくれてるのはしっかり感じてる。
それなのに、どうして結婚したいって思わないのかなぁ。
前にそんな話になった時に言われたのだ。
「結婚は営業として一人前になったら」と。
それっていつなのよ?
一人前っていうハンコをハゲ頭の藤代部長からもらったら一人前なの?
そんなん知るか!!
待ってる間にこっちはどんどん歳をとっていくのよ。
可愛らしいウェディングドレスが似合わない歳になっていくのよ。しっとりシンプルなやつしか着れなくなるのよ。
出来るだけ早めに子供も欲しいのよ。
そんな私の微妙な女ゴコロを、順は知る由もない。