ウサギとカメの物語 番外編


生活感はあるけれど、別に汚れてるわけでもなくまぁまぁ整頓されているリビング。
どのインテリアもナチュラルで温かみのあるものばかりだ。
これも梢の趣味と見た。


実を言うと梢と柊平の結婚生活がいまだに想像出来なかったので、覗いてみたいという気持ちもあってこうやって押しかけてきたところもある。
だから思う存分探索してやることにした。


ソファーから立ち上がり、リビングの中で一番目立つ大きな木目調のシェルフの前に立った。
本や雑誌、観葉植物、CDにDVD、それから写真立てがいくつかある。
それらに目を配らせつつ、対面式のカウンターキッチンで飲み物を用意してくれているらしい柊平に声をかける。


「なぁ、梢はどこ行ったの?トイレ……じゃないよね?」

「美容室行ってる」

「ははぁ、なるほど。それで柊平は子守りしてんだな」


ほんの数時間だとしても、こうして彼は1人で子供の面倒を見ているというのはなかなか素敵じゃないか。


掃除の行き届いたシェルフに配置されている写真立てを見ていたら、とても興味深いものを発見した。


梢の趣味なのか写真はけっこうたくさんあって、まだ2人が付き合ってるいる時のものとか、結婚式のものとか、もちろん健悟くんの写真もあった。
ま、どれも梢だけが全開の笑顔で、柊平はいつものボーッとした顔をしてたんだけどね。
これでいきなり彼も満面の笑顔だったらなんとなくショックだし。


で、俺の目に留まった1枚の写真。
これはなかなかの貴重なものに違いない。


「ふぅ〜ん」


口元が緩んで笑みがこぼれる。
いかんいかん。
梢が帰ってきたらしっかりいじってやらないとな、これに関しては。


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