ウサギとカメの物語 番外編


数十分後、混乱も収まって授乳も無事に終えて、どうにか平和が訪れた。
笑顔全開の梢がテーブルにお菓子やらシュークリームやら紅茶やら、並べ切れないほど並べて俺をもてなしてくれた。


「優くん!来るなら来るって言ってよね!部屋もちゃんと片付けておいたのに〜」

「ごめんよ〜、驚かせたくてさ」

「うまッ!優くんの持ってきてくれたお菓子、超美味しい!」

「それ愛里ちゃんセレクト〜」


わざわざ藤崎で買ったお菓子を早速食べてくれた梢は、愛里ちゃんが言っていた通り喜んで頬張っていた。
なんと柊平は止まらない俺たちの会話を聞きながら健悟を抱っこしつつ、カサカサ音が鳴るハンカチみたいなものであやしている。
ヤツは間違いなくイクメンだ。意外すぎる。


「なぁ、梢……」

「ん?」


美容室に行ったおかげでツヤツヤの綺麗なボブヘアになった梢に、コソッと俺は耳打ちする。


「柊平、ものすごくいいパパじゃん」


すると彼女は、一緒に働いていた時によく見せていた笑顔を浮かべた。


「ビックリしたでしょ?でも私は予想してたよ。柊平はそうなるって」

「え、マジ?なんで?」

「ふふふ、内緒」


含んだような言い方で笑う梢を見て、ふ〜ん、とこちらまでニマニマ笑ってしまった。
どうやら何か確信を得るようなことが前にあったんだなぁ。
夫婦ってそういうもん?
けど、なんかこういうのっていいなぁってほっこりした。


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