ウサギとカメの物語 番外編


「━━━━━で、どの口が言ったのか教えてくれない?ベロンベロンになっても介抱しない、ってやつ」

「す、すみません…………」


ただ今の時刻、深夜0時を過ぎたところ。
私はタクシーの中で、カメ男に説教を食らっている。


披露宴の途中からお酒を飲み始め、約1年半振りのアルコール摂取に体が反応。もっとよこせと言い出した。
欲求そのままに飲みまくり、二次会でも飲みまくり、散々大騒ぎした挙句、私はその場でバターンと倒れてしまったのだ。


「もう母親なんだから、そういうのいい加減にわきまえてほしいんだけど」

「はい……申し訳ありません……」

「俺がいなかったらどうなったと思ってるの?」

「も、申し訳ありません……」


カメ男が珍しく少々怒っている。いや、呆れていると言った方が正しいかもしれない。
そういえばヤツが怒っている姿は後にも先にも見たことがない。
いつもヤツは怒るというよりも呆れるのだ。


ひたすら謝り続ける私は、妊娠前よりもだいぶお酒に弱くなったなぁと反省した。
体質って変わるのかな。
前はもっともっと飲んでもまだ平気だったのに。
なんにせよ、久々に飲んで倒れるなんて恥ずかしいことこの上ない。


「でも…………幸せそうな奈々と田島を見れて良かった」


タクシーの後部座席で、シートに身を沈めながら笑顔いっぱいの2人を思い出す。
幸せのお裾分けってやつを、存分にもらった気がした。


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