ウサギとカメの物語 番外編
で、結局。
学習しない女、須和梢。ええ、私ですが何か?
カタログギフトを持ったまま、ソファーで爆睡していたらしい。
数十分後にカメ男の手によって起こされた。
と、いうか。
ありがたいことに嬉しいことに、抱っこしてくれたのだ。
体を持ち上げられた時に目が覚めて、ビックリして暴れまくったらヤツの迷惑そうな顔が目の前に現れて心臓が止まるかと思った。
「ぎゃあぁっ!び、ビックリしたぁ……」
「その声にこっちが驚くからやめて。いちいちリアクションが大きすぎる」
「ここまで来たら慣れなさいよっ」
とは言え、お姫様抱っこっていくつになっても嬉しい。
なんだか女の子扱いされてるみたいで、ちょっと特別な感じがした。
抑えても抑えても湧き上がる、ニヤニヤした笑い。
「なに笑ってんの」
ムスッとした表情で、不満そうに目を細めるカメ男。メガネの奥の細い目がさらに細くなっちゃってて、もう目なんて無いんじゃないのかと思ってしまう。
寝室のベッドに下ろされた私は、ニヤニヤしたままヤツの顔を見上げた。
ヤツの口元もほんの少し緩んでいる。その口が開いた。
「眠くないの?」
「覚めちゃった。ほら、バッチリ」
「寝不足でしょ」
「明日、健悟と一緒にお昼寝する」
「随分とお疲れのようだけど」
「気のせいじゃない?」
さっさと抱きたいって言いなさいよ、と笑いをこらえる。
だけどヤツがそういうことを直接言ってくるような男ではないというのは、重々分かっている話だ。